「それにしても、風呂何日ぶりかな?」

陽達は体を洗い湯につかっていた。

「1週間じゃない?華龍都市と黒森都市を行き来して後にサウザンドリィリに向かったからねぇ」

陽と薬は伸びをしながらリラックスする。

「本当にグリムズの子供なんだな」

カインは何気なく陽と薬の体を見る。

「ぇえ?」

陽は訳がわからず声をあげる。

「いや…その体中傷だらけだし、筋肉半端ないし。」

カインは陽の体をジロジロ見る。
とても、中学生とは思えないガッチリとした筋肉に、斬られたり、すったりした傷痕があちこちある。

「そうかな?まぁ毎日戦場みたいなものだから。」

陽と薬は自分の腕や足の傷痕を見ながら苦笑する。

「……聞きたい事があるのだが……」

突然、柳が陽と薬に向かって口を開いた。
聞きたい事で内容が分かったようで、薬は少し不機嫌そうな顔になる。

「楓って子はなぜバイザーをしていたんだ?
君たちみたいに素顔を明かさない?」

柳が言い切ると陽が口を開いた。

「……それは、後で女子も来たときにするよ。悪いけどここでは言えない。」

陽は横にいる薬を見る。
そこでようやく薬の表情に気づいた。

「陽…悪いけど先にあがる」
「おう」

薬は柳とカインを見もせず出ていった。

「ごめんね薬と楓は小さい頃から一緒にいるから…まぁ紅葉さんと柳くんみたいな感じかな」

陽は扉の方向を見ながら呟いた。

「あっ僕は 陽、グリムズ扇部隊所属。
実行班では班長(隊長でも)をつとめてる。

普通に陽でいいよ」

「俺は八夜 柳、柳でいい。」
「カイン・リャッカ・クーイだ。
俺もカインでいいぜ!」
「OK!」

その後、陽とカイン、柳は楽しく話していた。

~・~・~・~

時間を少し戻して…
こちらは、女子の会話。

「……広い……!」

陰は中に入るや目を見開く。

「確かにそうですね。こんな大きな入浴場は始めてみます。」

それに肯定する楓。

「……で?楓はお風呂に入るのにバイザー着けたままなの?」

アーミャは はぁ とため息をつき楓のバイザーを取ろうとする。

「いいんです!……まだとりたくありません」

楓は、暗い顔…といってもバイザーをつけているため分からないが、声音は下がっている。

「……蝶…楓の気持ちにもなって……」

陰は言葉が少ないが言いたいことはアーミャにはわかっていた。
体を洗ってアーミャはダイブして湯につかる。

「あの…楓さんは秋染と…何か……関係あるのでしょうか?」

紅葉は恐る恐るといった感じで聞いてみる。

「……楓でいいです。……質問は答えなくともこのあと分かりますよ。」

ぶっきらぼうに言った後、入浴場から出て行ってしまった。

「あのっ…ん!」

楓が出ていくのを止めようとした紅葉の口を手で押さえたのはアーミャであった。

「今はそっとさせてあげて。グリムズにはね、捨てられてしまった子もいるの。

だから、色々と怖いんだよ。」

楓のそれは少し違うが、結局のところ怖いと言うよりかはただただ嫌なだけだ。

だが、怖いと言えば紅葉も納得するだろうと思ったからだ。