ダーインスレイヴが向かったのは森の中にひっそりと建つログハウスだった。

「こんなところに家?」

珍しく神無月は呟く。それもそのはずだ。
森と化したリィリに家があるはずがない。

「ここは殺が9歳のときにグリムズから脱走した後に住んでた家よ。」

ダーインはそのままログハウスに入る。

中はそんなに広くなく、いかにも1人で暮らしていたといった感じだ。

「ここに燐が……」

堺人はログハウスの中を見る。
ベット、タンス、机と椅子……必要最低限の物しかない。

燐の部屋もシンプルで必要な物以外はなにも置かれていなかった。

「ここは私の結界が張ってあるから誰にも気づかれないわ。」

ダーインスレイヴは埃がかぶった机を指でなすりながら部屋を見る。

(結界は壊れてないけど……誰かがいた形跡はあるのよね…)

そんなことを思いながらダーインスレイヴはこれからどうするか考え始める。

「さてと…どうしたものか……」

扇は安全は確保できたもののサウザンドリィリの森から才華龍学院までの距離は遠く、相当なものだ。

「……戦うしか手は無いと思うんだけど?」

アーミャはニヤッと楽しそうな笑みを見せる。

「戦うにしてもねぇ……」

扇は迷っていた。
グリムズメンバーならばともかく才華龍学院の生徒である堺人たちを巻き込んでいいものなのか。

「なに迷ってるんですか?」

突然、レインが話しかける。
それに頷いたのは蜘夜と神無月。

「せやでぇ。うちらも戦うに決まっとるやないかぁ」
「…うん…」

蜘夜、レイン、神無月は任務で危険な戦闘もあった。
今さら怖がる理由もなく、戦う気でいた。

「僕たちも戦います!」

堺人、カイン、紅葉、柳もこれが初陣(才華龍学院の生徒として)であるが覚悟を決めた眼で扇を見ていた。

「……分かった…じゃあ破壊の呪いはダーインに任せて、アーミャとカイン、柳と紅葉、で蜘夜とレインと神無月で別れて行動してね。

ダーイン、破壊の呪いがいるのはどの方向?」

扇はてきぱきと決めていく。

「東の方向よ。このログハウスも囲まれてるわ」

ダーインは確かめるように眼を瞑り魔力感知に集中する。

「私と凪はここから南の方向、
アーミャ、カイン、柳、紅葉は北、
蜘夜、レイン、神無月は西、

それで、ダーインは東なんだけど、堺人もダーインについていって。でも気を付けてね」

念押しして、扇は堺人を見る。

「分かりました。」

堺人は覚悟をまた決めて頷いた。