才華龍学院 Ⅰ


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アーミャは繁華街を少し離れた時計塔にいた。

目の前には勿論扇がいる。

「で、師匠なんですか?」

口調はいつもと変わらないが表情はいつもの笑顔と変わって無表情だった。

「蜘蔬さんたちが来てるのは知ってるね?」
「はい。」

アーミャが頷くと扇は周の通信機を渡した。

「……!これは!……周師匠の……」

アーミャは驚きの顔でその通信機を耳につけた。
すると、液晶画面が出てきた。

そこには lastmessage と書かれていた。

「……」

アーミャはその言葉をずっと見つめる。

「呼び出したのはこのことだけ。その通信機はあなたにあげる。」
「えっ!いいんですか?……」

扇の言葉に目を開く。
だが、扇は首を縦にふった。

「いいよ。私はもう聞いたから。あとは蝶しだい。」

扇の言葉にアーミャは涙をこらえながら深くお辞儀した。

「ありがとうございます。」

そして、扇はまた口をひらいた。

「周はもういない。だから、唯一残ったその通信機は大事にするんだね。」
「はいっ!!」

アーミャは一礼して学院へ向かった。

1人残された扇は、周の通信機に入っていたメッセージを思い出す。

『こちら、周。報告をします。

フィルウェン王国に突如強力魔獣が現れました。王都は……炎で囲まれています。

住民はすでに焼かれ死亡、生存者ゼロ。

……恐らく強力魔獣は操られています。

あっ!水圧覇!……くっ炎が……

あと、ハーメルンの目的は、殺です。

報告は以上……私はもう、無理でしょうね。

これが最後の報告になります。……さよなら』

周はもう、自分が死ぬことが分かっていた。
分かっていてこの報告とlastmessageを残したのだ。

この通信はグリムズに届くことはなかった。
もし、通信機が残っていなかったらこのことは分からなかっただろう。

そして、これはアーミャに渡した通信機にはもう残っていない。

「ごめんね周。あれだけは蝶たちには聞かせたくないのよね。」


通信機からは周の報告以外にも音があった。

炎の燃える音と魔獣の叫び声……

       ……そして……



       周の苦しむ声が……