ロイ君は杖を掲げ、目を閉じて唱えた。


「"清き7つの水よ"」


地面に突き刺さったままの水柱はすうっと金色に輝き始めた。


「"七芒星の導きにより その身に天上の光を宿せ"」


水柱の光は弧を描くように隣の水柱に繋がり、それは円になった。

すると今度は直線的に伸びていき、七芒星が浮かび上がる。

「ま…魔法陣?!」

それは、教科書で見たことのあるものだった。

浮かび上がった円は波紋のように広がり、七芒星を囲うような3重の円になった。

ロイ君が呪文の文言を口にするたびに、円と円の間に古代文字が浮き上がっていく。


「"彼の者に幸福な夢と安息を"!」


ロイ君の言葉と同時に光は強くなり、風が吹き荒れる。

パァァっと目が眩むほどの光が辺りを包み、わたしは腕で目を覆った。



しばらくして目を開けると、そこはさっきまでとほとんど変わらない景色が広がっていた。

リンドヴルムがいて、ロイ君が私の前に立っている。

たださっきまでと違うのは、魔法陣や水柱が消え去り、リンドヴルムが静かに横たわっていることだけだ。


「ロイ君!」

わたしは立ち上がり、ロイ君に駆け寄る。

ロイ君は肩を上下させて息を整えていた。

「リンドヴルムに何をしたの?」

ロイ君に尋ねると、眠らせましたとロイ君は言った。

「リンドヴルムに勝てる方法を思いつけなかったので。眠らせるのと同時に回復もさせています。時期に動き出すでしょう」

ロイ君はリンドヴルムに目をやった。

そして「帰りましょう」とわたしに言った。


「僕らには任務がありますから」


わたしは頷いて、木の根元に置いておいたトニアースの檻を持った。

それから箒を取り出して、箒に跨ると地面を蹴って飛び上がった。


生い茂る木々よりも何倍も高いところまで上昇すると、空の色がよく見えた。

穏やかなオレンジの中、わたし達はターシャさんの元へと飛んだ。