防御壁が割れたその衝撃にわたしは吹き飛ばされた。
ドンッと木に背中がぶつかる。

「いった…」

背中に痛みが走る。

「リア先輩!」

ロイ君の声が聞こえた。

ハッと前を見るとリンドヴルムがすぐそこまで迫っていた。

立ち上がろうとしても、恐怖で足は動かなかった。


リンドヴルムは口元にエネルギーを溜めている。


もうダメだ。

目をぎゅっと閉じた。


「大丈夫ですか、リア先輩」


穏やかなその声にそっと目を開けると、次の瞬間、驚きのあまり目を見開いた。


「ろ、ロイ君!?」


リンドヴルムからわたしを守るように、ロイ君はわたしの前に立っている。

「何してるの、ロイ君! 逃げなよ! こんなとこにいたら危ないって!」

するとロイ君は「何を言っているんですか」とムッと眉を潜めた。

「リア先輩だって危ないでしょ」

「わたしは大丈夫だよ、それよりロイ君が…」

「僕のこと、そんなに心配ですか?」

ロイ君はわたしの言葉に被せるように言った。


「リア先輩が心配しなくても、僕は負けません」


それでも心配はするよ、と言おうとしたわたしを遮るように「それに」とロイ君は言葉を続けた。


「いつまでも僕のことを弟だと思わないでください」


凛とした顔で、まっすぐな瞳で、ロイ君はそんなことを言う。

わたしは目を見開いた。

ロイ君はリンドヴルムの方に向き直ると、ロイ君は杖を掲げた。


「水槍-アクア・ランス-!」


空気中の水分は先端の鋭い槍のような形に集まっていく。

ロイ君が杖を振ると、空中でできた7つのそれはまっすぐに飛んで行き、リンドヴルムの体を貫いた。

ギャアア、と耳をつんざくような叫び声をあげながら、痛みにのたうち回っている。

リンドヴルムを貫いた7つの水の槍はというと地面に突き刺さったままだった。

よくよく見ると、痛みにのたうち回るリンドヴルムをぐるりと囲うように均等な距離を保っている。