春、といえば、新学期。
そして、入学式。

式が終わった後といえば…


「安藤文也です。趣味は───」

教室に戻っての自己紹介だ。


光が差し込む教室は暖かく、カーテンをそよめかせる風が頬をかすめ、少し熱を奪ってゆく。


そんな和やかな空気の中に紛れる緊張感。

それもそうだ。
この自己紹介というもので人の第一印象が決まり、これからの学校生活も決まってくる。
ここで普通ならば学校生活も普通に。
逆に言えば、ここで悪目立ちをしたら、学校生活は最悪なものに…。

この制度は、いつ、どの時代でも俺たちを襲う。

──と、勝手に思っている。


まあ、あながち間違ってもいないだろう。

皆そう思っているから、当り障りのない自己紹介で流していく。
そして、機械的に叩く拍手が鳴る。


俺も平凡な自己紹介で流すつもりだ。
本当に好きなものなんてバカ真面目に言うわけがない。

絶対、ぜっったい、あれが好きだなんて言わない。言えない。




────絶対に、何よりも二次元を愛するアニオタなんて言えない……!!