勤務初日、とても緊張していました。やる気にはなっていたものの、実際に自分はこの仕事をできるのか?他人の排泄物の処理なんか当然やったことがありません。僕が他人のそんな汚物を処理できるのか。

 大勢のスタッフに初めましての挨拶をし、業務の流れや、スタッフ配置、指導してもらう先輩スタッフと話しをし、ホールと呼ばれる高齢者の方がいるスペースに向かいました。

 このディサービスは高齢者の方の定員数が最大で35名。ディサービスでは収用人数によって介護保険に請求できる金額が変わります。

 10人未満で小規模ディサービス。30人未満で通常規模ディサービス。それ以上で大規模ディサービス。

 介護保険上、利用者の人数によりスタッフの配置が決まっており、10人以内はスタッフ1人。そこから5人ごとにスタッフ配置が1人づつ増えていきます。

 35人だと最低6名のスタッフ配置と10人以上で看護師の配置が義務付けられます。ここのディサービスはスタッフが常に10人程いました。他にも介護保険法では細かい設定が多いのですが、書いていくと長くなりますので省きます。

 まず僕がする事は、来たご利用者様に自己紹介をし、荷物や上着を預り、本人が座りたいテーブルまで案内し、飲み物の注文を聞き、飲み物をお出しする。このディサービスでは、ご利用者の方の席が決まっているわけではなく、自分で選ぶ事ができます。中にはスタッフが席の調整をするケースもあります。

 無資格の僕は歩行の介助をする事はなく、介助が必要な時は他のスタッフを呼ぶように指示されていました。

 ご利用者様の中には認知症の強いかたも多く、来てすぐに帰ろうとする方や、僕を旦那さんと勘違いする方もいたり、早速びっくりしました。


 飲み物を出すといっても、ただ入れて出すだけではなく、ご利用者様によっては、飲み込みが悪く、気管に入りやすくなっている方もいるので、トロミ剤という粉を使って、飲み物にトロミをつけます。人により蜂蜜状にトロミをつけたり、ケチャップ状につけたりと、その方の状態によってまちまちです。そこは先輩がちゃんと教えてくれました。


 トロミ剤を使った事がある方はわかると思いますが、作り方を知らないとダマになりやすいのです。一通り飲み物を入れて、トロミ剤を入れ掻き回すのですが、どうしてもダマになってしまいます。ダマにならないやり方は高速で掻き回しながら、少量づつトロミ剤を入れるとダマになりにくいのですが、当然そんな事は知らず、教えてくれていた先輩もご来所される方の対応で、僕に付きっきりではありません。


 これでいいのか悩みながら、ダマの沢山浮いたお茶をお持ちしました。すると一人の高齢者の男性が、「ただでさえトロトロして飲みづらいのに、こんな粒々が浮いてるのなんか飲めるか!」と大声で一括。その場で僕は平謝りしていました。すぐに看護師が来てくれ、その場をおさめてくれましたが、「わからなかったら聞いてから出す。まだ勝手に判断しないように!」と注意をされました。そこでも平謝り。


 いきなり失敗をし、怒られ焦り、汗が噴き出しました。


 些細な失敗かも知れない。でも、それで怒られ、注意された事でこの仕事は介護でもあるが、接客業である事を教えてくれたのです。