【短編集】とびっきり、甘いのを。




「え、ちょ、拓巳…!?」




手首を掴まれ、ずんずんと歩いてしまう拓巳に小走りする。


と。




「……あげない、苺だけは渡さない」





掴まれた、もう片方の手首。


ふっ、と笑った拓巳は、



「なら最初から不安にさせんなよな」



パッと手を離して、ひとりで駅の方へ向かっていく。



「た、拓巳!」


「頑張れよ」



「ありがとうっ!」




そして残された私と恭ちゃん。



「……とりあえず、うち来て」



「…うん」




掴まれた手首が、熱い。