【短編集】とびっきり、甘いのを。





…恭ちゃんに、会いたい。

その顔が見たい。

「苺」って、笑った顔が見たい。



だけど、でも…


会うのが、こんなに怖いなんて。




いつまで待っても、なかなか帰ってこない恭ちゃん。

時計を見るともう11時を回っていて。




「遅いな」

「…ねえ、やっぱり今日はー…」


「ここまで来て帰らねえよ」

「でも…」





いつもいつも、こんなに遅くまで帰ってこないのかな。

それなら連絡できないのも仕方ない。



…私、ひとりで勝手に不安になって、恭ちゃんのこと全然考えてなかった…。


恭ちゃんだって大変なのに、自分のことばっかり…。



じわり、と滲む涙。

気付かないふりをしてくれるのは、拓巳の優しさだ。