【短編集】とびっきり、甘いのを。




「えっ、黒澤く…」



驚いてこっちを見上げている陽奈。

なんだか恥ずかしくて、何も言わずに目を逸らしてしまった。





結局、俺の元のペアは男だったらしく、陽奈は3番のくじを引いた爽やかくんと喋っている。




「怖いの平気?」

「あ…全然、ダメで、」

「はは、そんな感じするよね」




そんな会話を横目に、なんだか無性にイライラした。


…くじ、変わってやらなきゃよかった。

なんて思うくらいに。




「じゃあ次、尚!」



1人でがんばれー、なんて見送られて、真っ暗な校舎の中に入る。


校舎内の6箇所に置いてある紙を一枚ずつ取ってくるのが肝試しのルート。

夜の校舎は、夏にしてはかなり涼しい。



「つーか、1人で肝試しってつまんねー…」




全然怖くないし、話す相手もいない。

あー、やっぱり陽奈と回りたかった。