「そうだ、購買に新しいパンが出たんですよ、チョコデニッシュ」 「え、それは食べるわ」 「あはは」 話すのは、くだらないことでいいの。 特別じゃなくていい。 絢斗先輩と話すことなら、私には全部特別になるから。 「凜」 突然呼ばれた名前に、心臓が跳ねる。 いつまでも慣れない名前呼びに、ドキドキしているのは私だけ。 絢斗先輩の声ってだけで、凜って名前が特別な響きになる。 「前髪切った?」 「え……はい、よく分かりましたね!」 前髪が少し短くなったくらい、気付かないと思った。