【短編集】とびっきり、甘いのを。







急な転勤だったらしく、引っ越すまであと、1ヶ月。





彼がバイトを始めたらしいって、彼と同じ高校の友達から聞いた。



バイト始めた報告なんて、確かに彼女にしなくても良いかもしれないけど。


報告しないのは、やっぱり私のこと、もう彼女だって思ってないからかもしれない。





だけど目を閉じれば浮かぶのは、彼の横顔で。



あまり自分の話をしない彼だけど、私の話は楽しそうに聞いてくれた。



隣を歩いてると、たまに優しい顔して笑ってくれた。



寒いねって言ったら、温かいミルクティーを買ってくれた。




それでも寒いって言ったら、手を握ってくれたのに。