「やぁーメン!」


パァーンと竹刀の音を響かせ、駆け抜ける。


刀を収めて振り返ると、微笑むお父さんの姿があった。


「よし、今日はこのくらいにしようか」


「はい!」


黙想をして礼をすると、一気に体から力が抜ける。


やっと終わった…!


お父さんの稽古は厳しすぎるんだよ!


フラフラの体でやっと防具を片付ける。


6歳から剣道をはじめてもう10年。


16歳になった今では、県大会で優勝できるレベルになった。


これもきっと長いキャリアのおかげだと思う。


それでもきつい稽古は365日、一日たりとも休みはない。


それはこの市川道場の一人娘である私


市川遥(いちかわはるか)

の宿命なのかもしれない。