それは危険なラブミッション


そこで初めて、男性以外にも見知らぬ人が店内にもう一人いたことに気付いた私。

東城寺ルイと名乗った男性の存在感が大きすぎて気づかなかったのか。
それとも、西と呼ばれた男性の存在が薄すぎたのか。

後方に控えていた西さんという50代そこそこに見える白髪交じりの男性は、素早い動作で彼へと書類を手渡したのだった。


「こちらを」


東城寺ルイが、その書類を私に向けて広げる。


……借用書?
何だろうか、これは。

不審に思って彼を見上げる。


「これは?」

「借用書だが」

「それは分かるのですが……」


この店は、両親が残してくれた遺産で出店したもので、東城寺ホテルから借金なんて記憶にはない。


「よく見てもらえれば分かると思うが」