「松崎莉夏です」
すでに名前くらいは知っているかもしれないけれど、名乗りを上げて頭を下げた。
「私が何をしに来たか、分かるかしら?」
その顔に笑みは一片も浮かんでいない。
ルイの呼びかけにも来てくれなかった人だ。
私にとって良くない話だろうということは、簡単に推測できた。
けれど、それじゃないことを祈りたいという思いから、「はい」とは頷けなかった。
嫌な緊張に包まれる。
「そう……。では、お忙しいでしょうから、単刀直入に言わせていただきます。ルイから身を引いてくださらないかしら」
やっぱりと思わざるを得なかった。
「彼に相応の相手を用意するのが、私たち親族の役目だということをご理解いただきたいの。東城寺の発展のためにね。そしてそれは、私たちの総意」
親族全員が、私を邪魔な存在だと思っている。
最後の言葉に、それが込められていた。



