「多分。私もその辺のことは聞いたこともなかったから」
「そうだよね、親がやってる店のことだもの。詳しくなくて当然だわ。でも、どうして今頃になって? もう2年も経つのに」
「そうなんだよね。あんまり驚いたから、聞きそびれちゃった。でも、借用書には親の直筆のサインがあったし……」
多分、あの借用書は本物だ。
大企業にしてみたら、2千万円なんてたかが知れている。
そのトップが、わざわざ偽物を作ってまでお金のなさそうな庶民のところまで取り立てにくるとは考えにくい。
「親の借金って、背負わなきゃいけないものなの?」
ちょうど近くに来たマスターに、夕菜が問いかける。
マスターは突然話を振られて、「え?」と顎を突き出した。
「確か、放棄する権利が子供にはあるはずだよ」
「――そうなの!?」
すがりつく勢いでマスターの腕を掴む。



