「何かあったの?」
問いかけられて、まず最初に出たのは大きな溜息だった。
「やだ、何よ、どうしたの?」
隣の空いている椅子を引いて、夕菜がそこへ座る。
「おいおい、夕菜、この忙しいときに座ってなんかいられないぞ」
「大丈夫よ、アルバイトくんたちがいるじゃない。それに、親友の一大事におちおち働いてなんかいられませんから」
マスターにたしなめられても、全く動じない。
そばを通りかかった大学生のアルバイトに持っていたトレーを手渡すと、私の話を聞く体勢に入った。
「はい、お待ちどうさま」
淹れたてのコーヒーをマスターが置く。
そして、「ちょっとだけだからな」と夕菜に軽く釘を刺した。
文句は言うものの、マスターは夕菜には甘いのだ。



