恋の種をひとつぶ



……大熊くんは、どうやら、とっても照れ屋みたいなんだ。


口をとがらせて、耳をほんのり赤くして。


たまに目があうと、そらすのはいっつも、大熊くんのほうだ。



「……あ」
「……あ」



その日の帰り、一人で向かった昇降口。


わたしは偶然にも、大熊くんにばったり遭遇した。


とくん、と反応した心臓。


このときも、先に目をそらしたのは……やっぱり、大熊くんの方だった。



「あ……えっと。い、今から部活?」



大熊くんの肩にぶらさがるスポーツバックを見つめながら、ぎこちない声で、質問をする。


おはよう、は何度か口にした。


けれど、あいさつ以外の会話をするのは、保健室以来、はじめてだった。



「あー……うん。部活」

「そ、そっか!!」

「………」

「………」