念者は若衆の頼みを聞き入れ、自分の脇差を貸してくれました。
 そして、あの妖しい輝きを放つ刀を携え、若衆の背後へ。

 若衆というのは、美しさが全てでございます。
 歳が行けば、人は否応なしに衰えます。
 美しさを永遠に留めるためには、今このときで、時を止めねばなりませぬ。

 醜く老いさらばえる姿を曝すことは、若衆にとって、死よりも苦しいことなのでございます。

 折しも満開の桜の下。
 若衆は血が映える白い小袖で、最高の美を演出するのでございます。

 愛しい念者の脇差を、白い素肌に沈めれば、ぱっと広がる熱い想い。
 己の心を物語るように、幾度も愛でられた身体を真っ赤な想いが染め上げたとき、念者が構えた白刃が、びゅっと鳴って若衆を救うのでございます。

 世にも美しい若衆は、こうして枯れてしおれる前に、大輪の花を一気に散らすのでございます。



*****終わり*****