「毎回ながら、長谷村教授には敵いませんね。」
そう言いながら僕は白と黒の駒をコインケースの様な物に一つ一つ立ててしまっていく。
長谷村教授と僕はまだ教授が准教授だった頃から時々オセロをしていた。
大学院に進みたいと言う相談をしていた時にたまたま昔、通信でオセロをよくやっていたと言う話になり、
教授もその昔、ハマっていたとかで、それなら一度、やらないかと長谷村教授が家から自前のセットを持ってきたのだ。
それ以来、時々こうして二人でゲームをしているけれど、その勝敗は大抵、教授の勝ちとなっている。
片付けを終え、席を立ち
「それでは教授、僕はこれでーーー」
失礼しますと部屋の入り口へと向かうと
「君はーーー」
「ん、なんて言いました?」
「いや、すまない。ゲームに付き合わせて申し訳なかったね。」
「いえ、……それでは失礼します。」
僕は再びドアノブに手を掛け部屋を後にした。
部屋のドアがパタンと言う音を立てて閉まると僕は静かに溜息を吐いた。
聞き取れなかったんじゃない。
ちゃんと聞こえていた。
ただ、不意を突かれ答える事が出来なかった。
君はーーーーオセロの駒で言うとどっちなんだろうね……白と黒。
僕は…………



