昔は特定な相手は作らず適当な付き合いを繰り返していた兄貴だったけど自身の結婚に関してだけは珍しく慎重だった。


いや、かつてあの様な形で思いを寄せ合いながらも一度は離れてしまったあの人とだからかもしれない。


遠距離恋愛の果て、宇宙へと旅立つ半年前に籍を漸く入れた。まぁ、若干、父親になるには計算が合わないけれどそこは兄貴らしいと言うか。いや、兄嫁の強い意志なのかもしれない。


兄貴と家族を作りたいと言う夢を叶えるために。


「あれ、二人とも庭に行ったきり戻らないね?」


子供たちが庭から戻らない事を確認した上でキッチンに立つナルの隣に並び腰を抱き寄せる。


「んもぉ、七夢くん。くっつき過ぎ。みんなが来るわよ。」


5年前に双子の女の子を産んだナルは母親として逞しくはなったけれど華奢な体付きは相変わらずだし、こうして未だ僕とのスキンシップに顔を赤らめるナルは僕にとって世界一可愛い奥さんだと思う。


「これくらい良いだろ。最近、那瑠美不足なんだから。」


そう言いながら空いてる手でナルの顔をクイッとこちらに向かせ軽く口付ける。


「んもぉ、七夢くんっ。」


真っ赤になりながら僕の胸を叩くナル。ナル拒否るならもっと本気で拒否れよ。


「那瑠美…今度、子供たちをうちの親に預けて二人でデートしよう。」


「本当に?」


嬉しそうに僕を見上げたナルの唇をまた奪う。


「ああ、そうしよ。」そう言いながら今度は啄むように何度も何度も角度を変えて。


「んぅっ…」


ナルから何とも言えない甘い響きの声が漏れ理性が効かなくなりそうになる。


ヤバい…抑えられない。







「「パパ、ママっ、じいじとばあば来たよっ。」」








突然の声にちゃっかり滑り込ませていたナルのカットソーから慌てて手を抜く。


ナルを見ると真っ赤な顔して何やら言いたげだけど気づかぬふりして子供たちへと目線をやる。


実に孫と言う存在は不思議なものだ。


我が子は無条件に可愛く無二の存在だ。


けれどそれが孫になるとその愛情にさらになにかが加わる気がしてならない。現に母さんはともかくあの仕事一筋だった父さんが孫が出来た途端、まるで別人だ。


そのお陰で母さんや僕達への接し方も随分と丸くなった。


一体、その何かはなんなのか?


次の研究テーマにしてみるか?


花野井教授に話すとなんて言うだろうか。