ーーーごめん、ナル。


僕は心の中で何度も何度も叫びながら兄貴の話を聞いていた。


僕の独りよがりな思いがナルを苦しめていたなんて。


僕のナルに対しての慎重な態度が彼女を追い詰めていたなんて。


あの時、本屋にナルと兄貴を残して僕が去った後、ナルは泣いたらしい。


ナルのただならぬ状態に兄貴が場所を変え、話を聞いたところーーー


知らなかった。


ナルが僕に対してそんな風に思ってくれてたなんて。


てっきり僕は未だナルは兄貴の事を…


自分の不甲斐なさに嫌気が差す。


そして、この期に及んで兄貴がナルの泣き顔を見た事に嫉妬しているなんて。


僕はイカれてる。


一通りの話を聞いた僕はベッドから立ち上がると兄貴に言った。


「ごめん、兄貴。さっきの取り消し。ナルは譲れない。この先、もしナルが兄貴を選ぶ時が来たとーーーいや、そんな事、絶対させないから。」


僕のこれまで見せた事のない熱い宣言に一瞬、固まった兄貴だけど


「お前さ、俺に告ってどうするよ。ほら、行けよ。愛しの彼女の元に。」


「うるせぇ、言われなくてもそうするから。」


いつぶりだろうか、兄貴とこんな風に軽口を叩き合えるのは。


僕はずっと思い違いをしていたのかもしれない。


ずっとずっと不完全に絡み合った鎖が僕を締め付け苦しめると思っていた。


けれど違った。


鎖は絡まっているんじゃなくてーーー


繋がっているんだってことに


ーーーー今、漸く気付いた