青春と呼ぶには僕らはまだ青くない。

急いでその場から去ったものの、まだ心臓が忙しく動いている。


なっくん、あんな顔するんだ。


相手の人、綺麗な人だった。


多分、同じ研究室にいる人なんだろう。


私よりもずっと大人な女性だった。


何となく、なっくんは女の人と話す事自体が苦手なんだと思っていた。


だから、私ともちゃんと目を合わせてくれないんだって。


それがなっくんなんだって……勝手に決めつけていた。


違うんだ。


なっくん、ちゃんと好きな人にはあんな顔…見せるんだ。


二人の漂わせる雰囲気から特別な存在である事が伝わってくる。


私の知らないなっくん。


男の人の顔をしたなっくん。


いつだって私に対して優しく接してくれていたけど、それは自分の兄弟のトモダチだから?


そうだよね。


なっくんにとって私はみぃくんのトモダチでしかない。


なっくんからすればその程度の距離感なんだ。


私はなっくんを男の人として意識したと同時に失恋したんだなって。


その事に気づくと何故か胸が傷んだ。


何もずっとなっくんを好きでいた訳じゃないのに。


全然、意識なんてしてないのに。


その傷みは思ったより深かった。