「久しぶりよね。一家揃って夕飯なんて。張り切って作りすぎちゃったかしら。どんどん食べてよ。」


何だかんだと言いながら母さんの号令に皆、したがって一家四人で鍋をつついた。


この家にいた時は当たり前のように母さんの手料理を毎日、食べていたけれど、


親元を離れた今、いかに栄養バランスだとか体調なんかも考えて毎日、用意してくれていたんだなという事が身に沁みて分かった。


「ご馳走さま。本当に美味しかった。鍋なんか一人じゃ食べないし。」


心から母さんにそう告げると


「今日、本当に帰っちゃうの?泊まっていけばいいのに。実家じゃない。七夢の部屋、いつでも泊まれる様にしてあるのよ。」


ちょっと拗ねたふうに言う母さんのそういう所、いくつになっても変わらないな。


「今度、来る時は泊まるよ。明日、朝早いんだ。」


「そうなの?残念。まぁ、いつでも来れるんだしね。じゃあ、何か日持ちするもの作るから持って帰りなさい。どうせ空っぽの冷蔵庫なんでしょ?」


そう言うと母さんは立ち上がりまたキッチンへと向かった。


「ちょっと良いか?」


僕と母さんのやり取りには全く興味なさげにテレビを見ていた兄貴が二階を指さし言った。


「えっ、ああ、うん。」


リビングで経済書を読む父さんを置いて僕と兄貴は二階へと上がった。