僕は今日、久しぶりに実家へと来ていた。


相変わらず父さんは仕事で留守だ。


「でね、もうあの子ったら会社の話とかそういうの全然しないでしょ?だからお母さん、その方が上司だとか知らなくてただの知り合いのおじさんみたいに接しっちゃって……あら、この前頂いたクッキーこの辺りにあった筈なのに………」


母さんは僕が帰ってきた事に心から喜んでくれている様で、さっきから一人でペラペラと止まることなく話し続けている。


きっと、この広い家で一人きりで居ることが多いんだろうな。


兄貴も仕事で遅いって言ってたし。


それに久しぶりに会う母さんは相変わらず綺麗にしているけれど、少し歳を取った様な気がした。


自分が一つ一つ成長し環境が変わっていくと言うことは親も変化していく訳であって……。


「七夢、お夕飯、食べていくでしょ?お父さんもね珍しく仕事切り上げて早く帰ってくるみたいよ。」


「えっ、ああ……兄貴は?」


「あの子も今日、仕事みたいだけど七夢が来てるから寄り道せずに早く帰ってきなさいってさっきメール入れておいた。あら、やだ、本当にクッキーの缶どこにいったかしら……」


兄貴も帰ってくるのか……。


僕はあの日、本屋で兄貴と出くわしてからナルに連絡していない。


まぁ、校舎は違えど同じ構内にいる訳だし敢えて連絡しなくても自然に出くわすだろうと思っていた。


それに付き合ってるとはいえ電話が苦手なナルとは元から頻繁に連絡を取り合ってもいなかったし。


これくらいの期間なら連絡しないこと今までにもあったーーーーはず。


そう自分で分析するのにどこか僕はそれらが言い訳がましく思えて、あの場から逃げた臆病な自分がつくづく嫌になった。


あの後、兄貴とナルはどうしただろうか?


もしかして


お互いの気持ちを素直に打ち明けただろうか?


もしかして


兄貴とナルは今頃ーーーー