「食事ってその、いわゆるデートってことでしょうか? 」

「はい、そのつもりです。嫌ですか?」

「いえ、嫌じゃないですけど・・・」

「けど?」

「ご、ごめんなさいっ」



小鳥遊先生のことは嫌いじゃない。

教師としてはもちろん、男性としても魅力的な人だと思う。

デートに誘われて、ちょっとだけ嬉しかったりもした。


だけど、


あの時断ってしまったのは、


「嫌いじゃないと好きは全然違うでしょ?」

私は小さく呟いた。


「なに? 何て言ったの?」


今度は大きな声で、はっきり聞こえるように叫んだ。

「嫌いじゃないと好きは全然違う気持ちだよっ。 嫌いじゃない人はたくさんいるけど、好きな人は一人だけ・・結城くんだけだもん」


「え?」


ん?


う、嘘!?


私、いま何を口走って・・・


「あ、あの、えっと。 ごめん!!
何でもないから、今の忘れて。
本当にごめんなさいっ」

私は慌てて、部屋を飛び出した。


結城くんが私を呼ぶ声が聞こえたような気がするけど、頭が真っ白で何も考えられなかった。