俺が桃子センセイと教室に戻ると、クラスの男共がわらわらと集まってきた。

「結城、どこ行ってたんだよ！？
すっげー美人がお前のこと待ってるよ！！」

「あれ、彼女？ どこであんな美人と知り合うんだよー？？」


「年上だよな？ いくつ？」


騒ぎの中心に見知った顔を見つけて、俺は溜息をつく。

マジで来たのかよ、アイツは。


「遅いわよ、広人。私を待たせるなんて偉くなったわねー、あんたも」

緩く巻いたロングヘアーにスタイルの良さが際立つネイビーのシャツワンピース。

綺麗なアーモンド型の瞳を縁取る長い睫毛にすっきりとした鼻梁。
唇は少し厚めで、色っぽい。


誰が見ても文句のつけようのない美人。


「勝手に来たくせに、待たせるも何もないだろーが」

「あら、行くって電話してあげたじゃない」

「来ていいとは言ってない」

「もぅ。細かいことはいいからさ、せっかく来たんだから案内してよ」

相変わらず、人の話を聞かない女だ。


千花は俺の呆れ顔なんて意に介さず、俺の腕に自分の腕を絡める。
周りの奴らのひやかすような声も千花は全く気に止めない。


ふと、視線を感じてそちらに目を向けると桃子センセイが露骨に顔を背けた。

一瞬だけ合った桃子センセイの目が寂しげに見えたのは・・・


俺の気のせいかな？