「絶妙にタイミング合っちゃったね。おもしれ〜」

結城くんは珍しく全開の笑顔を見せる。

かわいいな。

こうやって無邪気に笑ってると、やっぱり高校生なんだな。

いつもより少しだけ幼く見える結城くんの横顔に何故かチクリと胸が痛んだ。
小さなトゲが刺さったような微かな違和感に私は必死に気がつかない振りをした。


その時だった。
急に後ろから悲鳴のような叫び声がした。

「きゃー！！ ごめんなさい！！
どいて、どいて〜、どいて〜！！」

自転車に乗った中年のおばさんが必死の形相でこちらに向かってきている。


ブレーキがきかないのか、ハンドルがきかないのか・・・・

かなりのスピードであっという間に距離が縮まる。

危ないっ、ぶつかっちゃう！！

「結城くんっ、よけて」

「桃子っ」


ドンッ、ガッシャーン。ガラガラ。


派手な音を立てて、私達とおばさんと自転車が転がった。
私のお夕飯の食材も無残にも坂道を転げ落ちていった。

「大丈夫ですか？？」
「救急車呼びます？」

周りにいた人達がかけよってきてくれる。

うっ、頭痛い・・・。