……浮気?
浮気なのだろうかな、あれは。
いや、そもそも、蒼汰さんと付き合っているわけじゃないんだから、浮気というのも変なんだけど。
「おい」
と背後で声がして、
「は?」
と凛子は振り向く。
「珈琲は出来ているようだが」
といつの間にかシンクの向こうまで来ていた蒼汰が、珈琲メーカーを見て言う。
「ああっ。
すみませんっ。
でも、すごくいい匂いですねっ」
となんのフォローにもなってないことを叫んでみたが、
「死ぬ程、煮詰まってると思うが」
と言われてしまう。
そこまでじゃないぞ、と思ったのだが、いろいろとやましいので、突っ込めなかった。
「そういえば、珈琲サイフォンもありましたね」
と珈琲をカップに移しながら、振り返り、棚を見る。
「昔はうちもあれで淹れてた気がするんですけど。
最近は使わないですね」
食器棚や飾り棚には、水出し珈琲の道具や、エスプレッソマシンなども綺麗に並べられている。
此処はやろうと思えば、なんでも一通りのものは揃っているようだ。
「あとで俺がサイフォンで淹れてやろうか」
と蒼汰が言う。
「お前の淹れた煮詰まった珈琲を飲んでからな」
もう〜っ、と思った。
結構優しいところもあるのに、本当に一言多い。



