密室の恋人

「僕も君が僕を見て、微笑んでくれると、嬉しいよ」
と彼は言う。

「でも、現実には、君は蒼汰に向かって微笑んでることになってるわけだけどね」

 そうですね。

 それで、結局、此処まで引っ張って来られちゃったわけなんですが、と思っていた。

「会えて話せてよかった、凛子ちゃん。

 僕、君が好きだよ」

 ……え?

「たぶん。
 蒼汰が無理やり君を自分のものにしようとしたから、頭に来て、蒼汰の中に入ったんだ。

 ああ、でも、もう出なくちゃ。

 蒼汰は意志が強いから、なかなか抑え込めなくて。

 凛子ちゃん、また、エレベーターで。

 月曜には会社に来てね」

 そう言い、彼はシーツに手をつき、身を乗り出すと、凛子にそっと口づけてきた。

 ちょっと微笑み、そのまま布団に倒れてしまう。

 えーと……。

 今のは?
と思いながら、凛子は、ふたたび、深い眠りについたらしい蒼汰の顔を眺めていた。

 誰も喋らず、静かになった室内に、外の音がよく響くようになった。

 しっかりとした造りなので、窓も揺れないが、風の音と、外の木々が激しく揺さぶられる音は聞こえてくる。

 嵐がかなり近づいてきたようだ、と凛子はカーテンの隙間から外を窺った。