密室の恋人

「冷めるぞ、早く食べよう」

「はいっ?
 あっ、そ、そうですねっ。

 珈琲にしますか?
 紅茶がいいですか?」

 じゃあ、珈琲で、と言うと、はいっ、とまた、軍隊で上官に命令されたかのような勢いで行きかけた凛子だったが、足を止め、振り返る。

「蒼汰さん」

 なんだ? と言うと、
「昨夜、かなりの嵐になったの知ってますか?」
と訊いてくる。

「いやーー」
と言うと、

「そうですか」
と言ってしまう。

 今の問いになにか意味はあったのだろうか。

 その浮気となにか関係あるのだろうか。

 そう思いながら、蒼汰は細いその背中を見送った。