密室の恋人

 凛子は黙ったが、なにか思うところあるようだった。

 蒼汰は溜息をひとつつき、
「凛子」
と呼びかけた。

 はい? と顔を上げた凛子に口づける。

 両腕を掴み、逃げられないようにして。

「は、離してくださいっ」
と相変わらず、間抜けな凛子は離したあとで、そんなことを言い出す。

「お前、浮気したって言ったってことは、そっちの俺の方がよかったってことか?」

「い、いえいえいえっ。
 そういうのじゃなくってですねっ。

 蒼汰さん、昨夜、言ってたじゃないですか。

 裏切るなって。

 私、蒼汰さんを裏切ってしまいましたっ。

 他の人とキスするなんて。

 それで、謝らねばと思ったんですっ」

「……でもそれ、俺なんだろ?」

「蒼汰さんだったんですけど、蒼汰さんじゃなかったんですよ、絶対っ」

 そこで、凛子は黙る。

 なにか言いたいことがあるが、伏せているような感じだった。

「……凛子」
と呼びかけると、はいっ、と身構えて返事をしてくる。

 もう完全になにかが怪しい人間の行動だ。