密室の恋人

「私は、もうちょっとおとなしめの、優しくはにかむように笑う人が好きです」
とそれでも一応、理想を述べてみたのだか、蒼汰は鼻で笑う。

「……いや、ですからね。
 そうやって、すぐ小馬鹿にするから嫌なんですよっ」
とまだ腰を掴んでいた蒼汰の手を引き剥がし、布団に潜り込んだ。

 目まで布団を被ったが。

 蒼汰がなにも言わなくなったので、そっと目だけ出して、窺うように見ると、蒼汰は頬杖をついて、こちらを見ていた。

「……そんな目で見ないでください」

「どんな目だ」

「言えません」

 好みでないとは言ったが、これだけの男前だ。

 間近で、ひとつベッドの中で、そんな風に見つめられて、微笑まれると、落ち着かない気分になる。

「俺は好みじゃないんだろう?
 いいじゃないか」

「貴方は卑怯ですよ」

「なにがだ」

「みんな自分のルックスだけ見て寄ってくるとか言いながら、最大限利用してるじゃないですか」

「なにも利用なんかしていない。
 俺はお前がそこに居るから、見つめてるだけだ」

 もう駄目だ。

 この甘言にも、この顔にも、騙されたくない。

 凛子は布団を頭まで被って逃避しようとした。

 だが、布団の向こうから、蒼汰の声が追いかけてくる。