密室の恋人

 そう言うと、一瞬、手が緩んだ。

 それっ! とその隙に抜け出そうとすると、腰の辺りを掴まれ、捕獲された。

「はっ、離してくださいよ〜っ」

「お前が逃げようとしたからだろうが。
 俺を裏切ったり騙したりとかなしだぞ」

「裏切るとか騙すとか。
 なにかトラウマでもあるんですか?」

 そう言いながら、腰を掴まれたまま、見下ろすと、蒼汰は勝手に膝の上に頭を乗せ、
「トラウマって言うんじゃないが。
 俺に言い寄ってくる女はみんな、俺自身を見てない気がしてな」
と言ってくる。

「なに言ってるんですか。
 みんな、蒼汰さんにメロメロですよ。

 貴方が何者か知らなくても」

「それはお前、俺の外見が好きなだけだろう。
 俺の中身まで好きなわけじゃない」

「あの、殴っていいですか?」

 自信過剰な台詞にも聞こえるのだが、蒼汰にとっては、大真面目な悩みなのかもれしない。

 ……軽く殴りたくなるが。

 蒼汰はこちらを見上げ、訊いてきた。

「お前はならないのか」

「は?」

「お前は、俺にメロメロにならないのか?」