密室の恋人

 甘くていい声だな、と思う。

 怒ってるときは、声が響くから怖いけど。

 蒼汰は本当に、ただ抱き締めているだけだった。

 温かい身体に触れていると、体温が高くなって眠くなる。

 蒼汰も少し、うつらうつらしているように見えた。

 だから、後ろの蒼汰に向かい、そっと呼びかけてみる。

「蒼汰さん……」

 返事はない。

「蒼汰さんーー。
 本当は昨日もなにもしてないんじゃないですか?」

 ずっと思っていたことを口に出してみた。

 いや、なにもってことはないかもしれないけど。

 そう見えるようにしただけで。

 しばらくして、寝てるのかと思った蒼汰が、ぽんぽん、と軽く後ろ頭を叩いてきた。

「やっと気づいたか」
と言う。

「まあ、バレないからわかったんだよ。

 真面目に生きてきたんだというのが本当だと」

 振り返ると、蒼汰は目を開けていた。

「なにかされてたら、起きて、わからないなんてことは普通ないからな」

 ましてや、初めてならな」
と言われる。