密室の恋人

「す、すみません。
 寝てました」

「……沈むなよ、いい大人が」
と扉の向こうから言われる。

 あまりに出てこないので、心配して呼びに来たようだった。

「蒼汰さん、私、此処に来てよかったです」

「そうだな。
 俺もよかったよ。

 ……がないしな」

 蒼汰の放った言葉は、ちょうど、両手で水をすくったところだったので、水音でよく聞こえなかった。

 だから、きっと、聞き間違いだと思う。

 ーーそう思うことにした。