密室の恋人

「大丈夫だろう。
 ま、流されてもいいじゃないか」

 蒼汰は軽くそんなことを言ってくる。

「えっ。
 あの、凄い船が!?

 買い直すの大変ーー

 ああ、伊月さんには大変じゃないか」
と言うと、莫迦、と言われる。

 シンクにすがった蒼汰は凛子を見下ろし、
「あの船は今、俺の一番のお気に入りだ。
 流されていいわけないだろう」
と言う。

「お前は、ほんとロマンがないな、ロマンが」

 そう罵ったあとで、
「退け。
 俺が晩ご飯作ってやる」
と押し退けられた。

 帰りの船が流されて、何故、ロマン?
と思っているのが顔に出ていたらしい。

 蒼汰はそれ以上、突っ込んでは来ずに、さっさと料理を作り始めてしまった。

「あっ。
 手伝いますっ、手伝いますっ」
と慌てて、並んで、じゃがいもの皮を剥き始めた。