密室の恋人

「お前に俺がわかるのか?」
と蒼汰は言う。

 図録を置いて、凛子の寝るソファまで来た。

 蒼汰は、白いソファに片膝をかけ、身を乗り出すと、凛子の髪を指先で摘んで言う。

「お前に俺がわかるのか?
 エレベーターでしか、俺を見ていないのに」

 どきりとした。

「……貴方こそ、私のことを知ってるんですか?」
と問うと、

「知ってるさ。
 いつも見てるから」
と蒼汰は言う。

「えっ。
 いつも?」

「お前は、エレベーターに乗ってるときしか俺を見ていないから、普段も俺が見ていることに気づいていないんだろう」

 いや、そんなことーー。

 ない、と言いたかったが、そういえば、そうだ。

 あの人が側に居ないときのこの人を、ずっと見ていることはない。

「夕べ、勝手なことをしたのは、確かに悪かった。
 でも、あれはお前が悪い」
とそこで何故か、蒼汰は赤くなる。

「な……なにがあったんですか。

 めちゃくちゃ訊くのが怖いんですが」
と言うと、

「じゃあ、訊かなきゃいいだろう」
と言われる。

「なにも思い出さなくても、このまま、俺と結婚すれば、問題ないことだ」