密室の恋人

 蒼汰は少し、本気で考えてみてくれたようだった。

「楽だからかな」
とぽつりと言った。

「お前と居ると、なんか楽なんだよ」
と言い、少し顔の向きを変える。

 整った顔に少し髪がかかった。

 その髪を払いついでに頭を撫でたくなる。

 珍しく蒼汰が弱っているように見えたからだ。

 だが、そんなことをしたら、なにか付き合う話を承諾したようだし、と躊躇していると、いきなり、蒼汰が目を開けた。

 彼の顔の上で、宙に浮いたままの手が行き場を失い、ビクつくのを見て笑う。

 なにを迷っていたのか見透かされた気がして、慌てて下げようとした手首をつかまれた。

「すっ、すみませんっ。
 離してくださいっ」

「手をつかんだだけだろうが」

 俺は痴漢か、と言われる。

 そのまま、上になった蒼汰が頬に触れてきた。

「覚えていないお前も嫌かもしれないが。
 覚えられてない俺も嫌だぞ」

「そ、それはそうかもしれませんが。
 あの、此処、外ですし、明るいし」

「お前、此処が何処か、忘れたのか」

 ーー無人島だ、と言いながら、蒼汰は口づけてきた。

 少し風が強くなってきたらしい。

 頭の上で、パラソルが大きくはためく音がした。