密室の恋人





 意外にも蒼汰が食器を下げるのを手伝ってくれたので、片付けは、早く終わった。

 軽く下洗いさえすれば、大きな食洗機があるので、楽勝だった。

「これ、業務用みたいですよね。

 いいなあ。
 うちにも欲しい」
と動いているその大きな食洗機を覗きながら言うと、

「お前、一人暮らしだよな?
 どんだけ洗い物を溜め込んでるんだ」
と言われてしまう。

「私、一人暮らしだなんて、言いましたっけ?」

「なんかペラペラ喋ってたぞ。
 何処に住んでるのかまで教えてくれた。

 会社の近くなんだな」

 初対面の男とは呑まない方がいいぞ、と忠告までされてしまう。

「……恐ろしいですね、酒の力って」

「俺が言うのもなんだが。
 お前、もうあの酒はやめておけ」

 まったくです、と言いながら、テンションが下がる。

 昨夜、なにがあったのか、よくわからないが。

 ともかく、記憶が一切ないことが怖い。

 せめて覚えていたかったような……。

 これでよかったような、とブルーになりかけたそのとき、キッチンの大きな掃き出し窓から、風に波立った水面が見えた。