少し窓を開けていた。

 目を閉じ、夜風に吹かれている凛子に、蒼汰が、
「少しは陸人のこと、好きだったか」
と訊いてくる。

「はい」

「……あっさり言うな」

「男の人として好きって言うんじゃないですよ。
 普通に生きててくれたら、上村さんと、蒼汰さんと、三人で仲良かったかもなとかそういう感じで好きなんです」

「俺は上村さんとは仲良くないぞ」

「またまた」

 二人で呑みに行ってたくせに、と凛子は笑う。

 まあ、時折、酔って、頬にキスして来ようとするのは困りものだが、それ以外は、おとなしいものだ。

 ……今のとこ。

 夜も更けてきた。

 今日はこのまま、上陸せずに、船で一泊する予定だ。

『やっぱり、此処からやり直すべきだろう』
と蒼汰が言ったからだ。

「あのとき、なにもせずに、こらえた俺は偉いと思わないか」

 ベッドルームに下りた蒼汰はワインを手に訊いてくる。

 今日はあの危険な安酒はない。

 なにもだっけ? と思いながらも、凛子は、
「思いますよ」
と笑ってみせる。

 ベッドに腰かける凛子に、少し屈んで蒼汰が口づけてきた。