凛子が入ると、エレベーターは普通に上昇を始めた。
上のボタンを押していたせいか。
誰かが上で呼んでいるのか。
一度、エレベーターの電源を落として、三分後くらいに入れ直してくれと森田に頼んでいた。
陸人が居るのなら、簡単には扉を開けてはくれないだろうと思ったからだ。
停電時バッテリー運転でエレベーターを止めて、一階下に下ろす。
扉が開いたところを見計らい、蒼汰を引っ張り出した。
今は普通に動いているはずだ。
「そう来る? 凛子ちゃん」
と陸人は笑った。
陸人はちゃんと陸人の顔をしていた。
これが本物の手嶋陸人。
如何にも女の子に受けそうな繊細で優しそうな顔をしている。
何故、この顔で私の前に現れなかったのか。
それはおそらく、彼には最初からわかっていたからだ。
私が蒼汰さんを好きなことを。
私自身がその気持ちに気づくよりも早く、彼はそのことを知っていた。
「それが、貴方の本当の顔なんですね」
「そうだよ、凛子ちゃん。
ちょうど今、話してたところだよ。
蒼汰は本当に君を好きなのかなって――」
え。



