密室の恋人

 



 池……プールかな?

 庭を入ると、真正面に大きなプールらしきものがあった。

 すぐ側に海があるのに、金持ちの考えることはわからない、と思ったが。

 美しく水の張られたこのプールが、別荘をより印象的に見せているのは確かだった。

 庭の木々や建物の姿が静かな水面に映っている。

 すべての配置が計算し尽くされている感じだった。

 そのプールの横には板張りのスペースがあり、くつろげるように、滑らかなフォルムの木製のソファが置かれている。

 うっかり、このまま此処に住みたい、と思ってしまった。

「どうした。
 別荘目当てに俺と結婚する気になったか」
と後ろの蒼汰が笑う。

「はい。
 すみません。

 今、一瞬、貴方と結婚しそうになりました」

 一瞬ってなんだ、と言いながら、蒼汰は別荘に向かって、プールサイドを歩き出す。

 いつの間にか、また繋がれた手。

 蒼汰と自分の姿が、別荘とともに、水面に映る。

 蒼汰の横に、あのもう一人の姿を見ようとしたが、やはり、そこには誰も映ってはいなかった。