密室の恋人

 その頬に軽く口づけた。

 凛子が手すりいっぱいまで、飛んで逃げる。

 毎度、反応が楽しいな、と思いながら、
「そんな逃げなくても」
と言うと、

「いや、上村さんはいい人なんですけど。

 時折、こういう悪さをするから、警戒しなくちゃとは思うんですけど。

 あまりにも、そんなことしそうにないジェントルマンな感じなので、顔とか雰囲気とか、口調とか。

 つい油断しちゃって、毎度、罠にかかっちゃいます」
と文句を言ってくる。

「そんなにかかってないじゃない。
 いつも、うまいことすり抜けてるし、残念ながら。

 それに、いきなり迫るのは、僕も蒼汰くんも同じじゃない」

 同じじゃないですよ〜、と凛子は反論してくる。

「ま、蒼汰くんは、良い悪党。
 僕は悪い悪党かな」
と言うと、

「悪い悪党ってなんですか」
と言ってくる。

 はは、と笑って言った。

「大丈夫。
 凛子は僕が守るよ。

 どうか、蒼汰くんと幸せになって」
と言うと、

「……上村さん」
と驚いたように感謝される。

 だから、つい、言いたくなった。