密室の恋人

 それにしても、総務のフロアから乗ったはず。

 もう屋上まで行ったくらいの時間は流れているはずなのに、一向にエレベーターが着く気配はなかった。

「あのさ、蒼汰くんに憑くのやめたら?」
「なんで?」

「凛子ちゃんが疲れてるからだよ」

「嫌だよ。
 また此処で膝抱えてしゃがんでろって言うの?」

 この密室に閉じこもって、と言う。

「じょ……」

「成仏はしないよ」
と先を塞ぐように言われた。

「んー。
 じゃあ、僕に憑かない?」
と言うと、陸人は、は? という顔をする。

「君が憑いてたら、気を許すだろ、凛子ちゃん」

「……悪霊より警戒されるってどうなのさ、あんた」

 そう呆れたように言ってくる。

「いや、だから、君が入って、こう、無邪気な感じに振舞ってくれたらいいなって」

「今度はそれで凛子ちゃんを安心させて、また、ホテルに連れ込もうっての?

 どんな策士だよ。
 しかも、絶対、策に溺れるね」

「いや、今度は、ホテルより、僕の部屋がいいな」
と大真面目に語り、更に陸人に呆れられた。