「また行きたいな」

「え?」

「また行こう。
 船に乗って」

 ずっと二人きりで居られた、あの無人島に。

「そうですね」
と凛子は微笑む。

 この間、凛子に、うちの親とは似ていない、と言ったら、ちょっと不服そうだったが。

 付き合い始めの魔法か。

 自分でも綺麗な母親だと思っていたあの親より、今は凛子の方が百万倍綺麗に見える。

「よし。
 今日は俺が朝ご飯を作ってやろう」
と凛子を抱き上げると、凛子は、

「ありがとうございます。
 蒼汰さん、大好きですっ」
と言ってくる。

「……それは俺が好きなのか?
 朝食作ってくれるから、俺が好きなのか?」
と訊いてみた。

「どっちもですっ」

 朝の光の中、凛子はそう微笑む。