密室の恋人

「気をつけなよ。
 あの上村には」

 そう説教してくる陸人に少し笑ってしまう。

 上目遣いに、
「なに?」
と訊かれた。

「いえ、陸人さん、やっぱりやさしいなと思って。
 心配していただいてありがとうございます」

「やさしくなんてないよ。
 僕は悪霊。

 悪霊だよ。
 ちゃんと警戒して。

 悪人の上村と一緒だよ」

 自分で言うかな、悪霊って、と凛子は苦笑する。

 ずいぶんと親切な悪霊だ。

「でもあの、本当に陸人さんが悪霊なら、蒼汰さん、叩き出してると思います。

 あの人、なんていうか……やさしいけど、容赦ないっていうか。

 マイペースなので」

「いいの?
 そんなこと言って。

 蒼汰聞いてるかもよ」

「いいんです。
 私、蒼汰さんのそんなところも好きなんです」
と微笑むと、陸人は溜息をついて言う。

「調子狂っちゃうよね、凛子ちゃんには。
 まあ、だから、上村もなんだかんだで、手を出せずに居るのかも。

 上村は悪人だからね、悪人。

 僕は悪霊。
 ちゃんと警戒してね」

 そう繰り返す陸人に笑ってしまう。