密室の恋人

「いや、ちょっと凛子にお仕置きしようかと思って」

 あいつ、陸人にも上村さんにも甘すぎるからな、と思っていた。

「それと、……少し考えることがあって」

「それ、凛子さまの側で考えたらいいんじゃないですか?」

「何故、そんなにプッシュする」

「私が振られたばかりだからですよ」
と辰起は溜息をついて見せる。

「蒼汰さま、彼女という生き物は、もうちょっと置いておいても大丈夫かなーなんて、呑気に思ってたら、いつの間にか、水槽から消えています」

「餌やらなかったのか。
 っていうか、実感こもりすぎてて怖いぞ」

 槙村父のように完璧ではないが、年が若いので、フランクに話してくることもあって、それで助かったりもする。

「私、蒼汰さまにだけは、失敗していただきたくないのですよ」

 そう殊勝なことを言ってくる辰起に、
「お前だって、まだ失敗したとは限らないだろ。
 餌持って行って来い」
と言った。

 まあ、餌という言い方もなんだが。

「そうだ、これをやるよ」
と蒼汰は辰起に、ディナークルーズのチケットを差し出した。

「明日なんだが、今、そういう気分じゃないから」

 この間駄目になったので、凛子に内緒で取っておいたのだ。