そう思ったとき、ノックの音がした。
槙村辰起(たつき)、執事の槙村の息子で、今は見習いの執事をやっている。
辰起は、槙村よりは母親に似た綺麗な顔をしていた。
「蒼汰さま。
今日はお帰りだったんですね。
もしや、ご夕食食べられるんですか?」
と訊いてくる。
どんな執事だ。
食べるに決まってる、と辰起を見る。
「今日は凛子さまのところには行かれないんですね。
うちの深草少将は此処で挫折ですか?」
と辰起は笑った。
「あ?」
小野小町に百夜通えたら、契りを結んでも良いと言われた深草少将は、九十九日通って、いよいよという最後の晩に大雪で凍死してしまったらしいが。
それを主人に例えるとは、どんな不遜な執事だ、と思った。
「私、密かにカレンダーに印をつけておりました。
蒼汰さまは、此処のところ、ほとんど毎晩、凛子さまのところにいらっしゃってます。
結婚するまで、凛子さまの許に通い詰められるかと思ってました」
槙村辰起(たつき)、執事の槙村の息子で、今は見習いの執事をやっている。
辰起は、槙村よりは母親に似た綺麗な顔をしていた。
「蒼汰さま。
今日はお帰りだったんですね。
もしや、ご夕食食べられるんですか?」
と訊いてくる。
どんな執事だ。
食べるに決まってる、と辰起を見る。
「今日は凛子さまのところには行かれないんですね。
うちの深草少将は此処で挫折ですか?」
と辰起は笑った。
「あ?」
小野小町に百夜通えたら、契りを結んでも良いと言われた深草少将は、九十九日通って、いよいよという最後の晩に大雪で凍死してしまったらしいが。
それを主人に例えるとは、どんな不遜な執事だ、と思った。
「私、密かにカレンダーに印をつけておりました。
蒼汰さまは、此処のところ、ほとんど毎晩、凛子さまのところにいらっしゃってます。
結婚するまで、凛子さまの許に通い詰められるかと思ってました」



