密室の恋人

「お前の方がタチが悪いだろうが、過去じゃなくて、今なんだから。

 ……わかった。
 やっぱり、お前とは結婚しない」

「ええーっ。
 なんでですかっ」

「俺が寝てる間に、あいつと浮気してるかもしれないだろ。
 これから先も」

「これから先もってなんですか。
 先もって。

 今もしてないしっ。
 これから先もすることないしっ。

 私、蒼汰さんのために、あんたに頑張ったのに~っ」
と凛子は泣きながら訴えてくる。

 結婚しないなんて、もちろん嘘だ。

 それでなくとも、上村さんが隙あらばと狙っているのに。

 前門の陸人、後門の上村さん。

 ……最悪だな。

 特に、陸人とは、図らずも身体を共有してしまっていることだし。

「じゃあな、凛子」
と途中のフロアで廊下に出ると、後ろで凛子がわめいていた。

「いや、もうっ。
 蒼汰さん、大嫌い〜っ」

 そう叫んでおいて、間を置かずに、

「やっぱ、嘘ですーっ!」
と言ってくる。

 吹き出してしまった。